申請取次制度と行政書士業務

 私は行政書士として入国監理局に対するビザ申請手続きを代行する中で何故行政書士にビザ申請手続きについて相談しなかったのかと感じる依頼人が多い。

 

私に依頼してくる外国人の方に多いケースでは、自分で申請をして不許可になってしまった後に相談に来ることが多いからだ。

 

よくあるケースは、それぞれの国のコミュニティの友人や年配の方で永住資格を既に取得している人からの情報を基に判断してしまい、本人申請で不許可になってしまったというもの。

 

入国管理局の審査で重視する内容は日々変わっていくし、法務省入国管理入国管理課長からの通達で運用がある日から変わってしまうことがある。

 

一旦、不許可になってしまうと再申請から許可を勝ち取るのはかなり高いハードルとなるので申請前に一度は相談してもらいたい。

 

ただし行政書士にも専門分野があり、全ての行政書士が対応している訳では無い。日本に継続して在留したいという希望を実現するためビザ申請を業務をしている行政書士は「申請取次」の届け出をしていることがほとんどだ。(以下、申請取次行政書士)

 

今回は申請取次行政書士の役割をご紹介する。参考にして頂けると幸いだ。 

 


1.申請取次制度の沿革

 

申請取次制度の始まりから現在に至るまでの制度の沿革を挙げてみる。

概要を把握して頂ければ結構だ。

 

<沿革>

昭和62年5月 

・企業及び学校等の職員で法務大臣が適当と認める者に申請取次を認める。

・国内の旅行業者の「再入国許可」の申請について申請取次を認める。

 

平成元年6月 

・行政書士の「資格変更」「期間更新」「永住許可」「再入国許可」の申請取次を認める。

 

平成2年

・行政書士の「就労資格証明書の交付申請」等が取次対象となる。

 

平成6年2月

・「在留資格認定証明書付申請」について、申請取次公益法人の職員に取次が認められる。

 

平成10年9月

・「在留資格の取得許可申請」「在留資格の取得による永住許可申請」についての取次が認められる。

 

平成16年12月

 

・弁護士等に申請取次が認められる。


2.行政書士の業務

 

・「官公署に提出する書類」の作成とその代理、相談業務

・「権利義務に関する書類」の作成とその代理、相談業務

・「事実証明に関する書類」の作成とその代理、相談業務

 

 以上が大まかな行政書士業務の分類になるが、他の法律に制限されるものについては、業務とすることが出来ない。

 

入国管理局への申請は本人申請が原則であるため、行政書士であるだけでは申請取次は出来ないが「官公署に提出する書類の作成」については、行政書士の法定業務なので、申請取次行政書士でなくても行うことが出来る。

 

申請取次制度が出来る前は行政書士が書類作成をして、ビザ申請は依頼人に同行するという形で業務を行っていたが、現在は入国管理局へ提出する書類作成と申請代行を一括して依頼することができる申請取次行政書士が一般的なので、行政書士に依頼する場合は、まずは申請取次者かどうかを確認するのが良いだろう。

 

3.申請を取次ぐ「申請取次者」

 

申請取次者有効期限は登録から3年間で、更新しなけばならない。

 

法律上の取次とは、「自己の名をもって、効果が他人に帰属するように法律行為をなすことを引き受ける行為」を言う。

 

入国管理局では、3点の理由で外国人の在留期間更新、資格変更、その他の申請について原則入国管理局の窓口に出向いて本人が申請することを求めていた。

 

1.申請人と窓口にきた人が同一人であるか

2.申請内容の確認

3.記載内容について訂正を指示する

 

しかし近年は訪日外国人が急増したため、入国管理局の処理能力を超えた申請

数になっている。

 

申請人本人が窓口に出向かなくても、申請人が出向いた場合と同じように申請を受理することが確実にできるのであれば、 申請人の負担が軽減されるので入国管理局でも、申請受理業務が効率的に処理でき、 窓口の混雑緩和の効果等もあることなどから、本人に代わって申請の取次ぎを認めるという制度が申請取次制度になる。

 

制度趣旨として、申請人が出向いた場合と同じように申請を受理することが確実にできること取次者に求められている。


4.申請取次行政書士

ここまで、行政書士業務と申請取次制度を紹介してきたが下記の図が分かりやすいと思う。

申請取次制度は、外国人が所属する所属機関や団体の職員でも取次が出来るが、行政書士は申請取次を行うことで報酬を得て業として行うことが出来る。

 

制度の沿革を見てもわかると思うが、徐々に入国管理局からの信頼を得て行政書士に申請取次を開放していったことがお分かり頂けたと思う。

 

私たちは、その信頼に応えて外国人の方々の申請手続きの利便性を向上させることに励みつつ、また入国管理局の事務処理の負担を軽減していけるよう努めていかなければならないと思う。